日本社会論|グローバル化は足元からやってくる ~国際学で切り取る世界と社会~|ビジネス&キャリア|ヨミモノ|QuonNet
前回、記しました通り、関東大震災後に「復興小学校」として再建された旧京華小学校は、現在、「京華スクエア」として生まれ変わり、3Fには早稲田大学エクステンションセンターが入っています。
その校庭には現在も京華小学校の遺産として、薪を背負いながら本を読むコンクリートで造られた二宮金次郎の像があります。同小学校の過去の卒業生数は1万人弱、多くの子供たちが金次郎を眺めて学んでいったのでしょう。
二宮金次郎像がありますのは、京華小学校ばかりではありません。全国各地で金次郎像が見られます。
小学校の校庭に金次郎像(石・銅・コンクリート・セメント)を置いた初めての例は、1925年に愛知県の前芝小学校のセメント像であるとされます(井上章一『ノスタルジック・アイドル二宮金次郎』、1989年、53-55頁;岩井茂樹『日本人の肖像 二宮金次郎』2010年、162頁)。その後、愛知県の他の小学校が後追いし、昭和8年~15年にピークを迎えます(愛知県教育委員会編『愛知県教育史第四巻』1975年、119-120頁)。そして、この動きは、ほぼ同時並行的に全国の小学校に広がっていきました。
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なぜ金次郎が像としてシンボル化したのでしょうか。
そもそも薪を背負いながら本を読んで歩く例の金次郎の姿は『報徳記』(1881年)で初めて登場します。絵としては、その『報徳記』をベースに書かれた『二宮尊徳翁』(1891年)の挿絵が最初です(藤森照信『東京路上博物誌』、1987年、120-122頁)。1904年以降、道徳教育(修身)の国定教科書に掲載され、1920年代になりますと、ついに教科書から飛び出し、金次郎は像となって薪を背負っていくのです。
金次郎がこれ程まで評価される理由は、彼が江戸末期に小田原藩と小田原領であった下野国(栃木県)桜町にて実践した自助的な農政をモデルとすることで、自主的に国家に献身・奉公する国民の育成を目的としたとされています(伊勢弘志「国民統制政策における銅像と社会―校庭に「二宮金次郎像」が建つまで―」『駿台史学』第140号、2010年8月)。
どんな色や形はマイソールの民俗芸術で使用されていた?
銅像は、戦時中、金属供用のために壊され、戦後は戦前、戦中への反動もあり、撤去された例もあるようです(戦後も、金次郎の「勤勉さ」自体は否定されず、建設されたケースもあったとされています)。そして、戦後を生き延びた金次郎像たちも、このところ老朽化が目立ち、取り壊されるケースが目立っていると報じられています(毎日新聞、2012年1月25日)。
「京華スクエア」(旧京華小学校)の金次郎像は昭和15年(1940年)5月に造られており「72歳」です。早稲田と言えば、大隈重信像が有名ですが、エクステンションセンター八丁堀校では、この金次郎像が多様な学生を見守っています。
早稲田大学エクステンションセンターには、様々な方々が学生として通ってきています。フルタイムのお仕事をされている方、パートタイムのお仕事をされている方、専業(兼業)主婦、ご退職後第二の人生を謳歌されている方、お身内の介護をされている方、お孫さんのお世話をしている方、現役の学生等々です。
皆さん、薪を背負いながら本を読んで歩く二宮金次郎に負けず何か他のことを「しながら」勉強しているのです。
我々は、 4月の20日に何を祝うのですか?
以前、日本の大学学部及び大学院進学率は他の先進国よりも著しく低いことを記しました(2011年10月2日、10月5日)。
日本の20代と主な先進国の20代を比較すると学歴(進学率)において劣っていることが分かります。この格差の理由は、他の先進国においては、パートタイムで学ぶ学生が増加し、仕事を「しながら」、主婦(主夫)を「しながら」、育児を「しながら」大学、大学院に通っているのですが、日本ではこのパートタイムの学生が殆どいないのです。
グローバル化の中で、学ぶべきことはますます増えています。従来のように、フルタイムの学校教育で学業が十分な時代ではないのです。大学、大学院にももっと進学して欲しいと考えます。さらに大学に留まらず、卒業後も私たちは常に何かを「しながら」学び続けなければならないのです。
金次郎というモデルがあるのですから、(早大エクステンションセンター等の社会人教育機関も増えていますし)日本人にもできると思います。
【老朽化のため金次郎像の取り壊しを決定したある小学校の教諭の一人が復元に反対し「努力を尊ぶ姿勢は受け継ぎたいが、子どもが働く姿を勧めることはできない」とコメントしたと報じられています(毎日新聞、2012年1月25日)。「70歳代」「80歳代」の金次郎像をそのように捉えてしまうその先生の感性に驚きますが、今の時代、金次郎像は子供が働いているメタファーではなく、むしろ大人が歴史から学ぶべき教材として存在するのではないでしょうか。】
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